牝系とは母親側の血統のことで「母系」「ファミリー」とも言います。
母の母、またその母の祖母などの流れをファミリーラインといいますが、名馬を多く生み出すファミリーラインを名牝系(めいひんけい)といいます。
名牝系は、その馬自身の競走成績があまりよくなくても、優秀な馬を生み出す可能性が高いことがわかっています。
馬券購入で血統に注目する場合、種牡馬に注目が集まりがちですが、牝系を見極めてこそ血統マニアでしょう。
繁殖牝馬
競走馬を産む牝馬を繁殖牝馬(はんしょくひんば)、肌馬(はだうま)といいます。牝馬は競走馬としてレースに出た経験がなくても、その牝系に優秀な血統がいる場合は繁殖牝馬になる場合があります。
種牡馬は多い時で1年に200回程の種付けをしますが、牝馬は1年に1頭しか産駒を産めません。しかも不受胎、流産、死産のリスクもありますので、一生涯で10頭も送り出せばいいほうだといわれています。
1頭の牝馬が送り出す競走馬の数は限られているので、牝馬の母としての能力は、個体ではなく牝系として評価されています。
兄弟、姉妹馬の決まり
競走馬の世界では、同じ母親から生まれた馬同士のみを兄弟、姉妹として扱うことになっています。父親が同じでも母親が違う場合は兄弟・姉妹とはなりません。
種牡馬となる父親は年に100回以上の種付けをするので、子供の数が桁違いです。それを全て兄弟、姉妹として扱っていると意味がないからです。
父母ともに同じ場合には「全兄弟(全姉妹)」といい、最近では2009年の有馬記念優勝馬ドリームジャーニーと三冠馬オルフェーヴルの2頭が父ステイゴールド、母オリエンタルアートとまったく同じ配合となりますので、全兄(ぜんけい)、全弟(ぜんてい)となります。
母親だけが同じ場合は「半兄弟(半姉妹)」になります。
エピファネイア(父シンボリクリスエス)と、リオンディーズ(父キングカメハメハ)は、父は異なりますが、同じ母シーザリオから生まれていますので、半兄(はんけい)、半弟(はんてい)となります。
母が同じで父が兄弟同士の場合「4分の3兄弟」ということもあります。
牝系をみる場合のコツ
通常、父系を見る場合は父親(種牡馬)をみればその馬の特性などがわかりますが、母親の場合は母親が産んだ産駒の数が少なくサンプルが少ないので、母、祖母、曾祖母ぐらいまでさかのぼって見るようにするのがいいです。
また母方の血統をたどって、だいたい5親等以内の馬(叔父、叔母、甥・姪、いとこなど)も、すべて牝系つながりで見て、活躍馬が多く見られるファミリーは名牝系ということになります。
日本の名牝馬
日本で有名な牝馬はスペシャルウィークやウォッカを送り出したシラキオ系です。戦前に輸入された馬の血統ですが、近年では73年にアメリカから輸入された、スカーレットインクに始まるスカーレットインク系が有名で、娘のスカーレットブーケはダイワメジャー(G1を5勝)、ダイワスカーレット(G1を4勝)を産んで、子孫を広げています。
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- 【スカーレットブーケ】
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スカーレットブーケは日本で21戦6勝と成績は普通ですが、勝つレースは重賞が多く、大舞台に強い馬でした。競走馬としてよりも種牡馬としての成績がよくダイワメジャー、ダイワスカーレットなどの活躍馬を送り出しています。
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- 【ダイワメジャー】
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ダイワメジャーは大種牡馬サンデーサイレンスとスカーレットブーケの間に産まれサラブレットです。28戦9勝と成績は普通ですが、種牡馬になってからは、2年連続でJRA賞最優秀短距離馬に選ばれるなど、種牡馬として大活躍しています。